「男の甲斐性」

２．

「・・・・大事な日が来ないんだ・・・・・」
驚く隆臣にもう一度、今度はか細い声で告白をする命人。
「来ないって、お前っ、誰を孕ましたんだ？！・・・まさかっ！」
その時、隆臣の脳裏に浮かんだのは自分より一つ年下の少女の顔だったが
それに対しての命人の答えは予想を遥かに超えたものだった。
「違う！来ないのは、来ないのは俺なんだよ！」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

ここで突然ですが、クイズです。
Q１：今、目の前にいるこの男は何と言ったか？
　A：自分に女の子の日が来ない。
Q２：奴の性別は？
A：言わずもがなの男。隆臣が知る限りでは絶対に男。まず間違いなく男。
Q３：男にはアレがあるのか？
A：保健体育を習った限りではある筈が無い。医学上有ったら不味い。
まとめ：命人さんによるオミッチ苛め。

「お前はバカか！」
三十秒きっかり考え込んでからバッサリ斬って捨てる隆臣だったが、命人の
方は真面目に返してくる。
「ひ、酷い、人がせっかく勇気を出して告白したのに！」
「何が酷いんだ！男にあの日があってたまるか！！」
「そんなっ・・・原因を作った張本人の癖に！！」
「ちょ、ちょっと待て！いつお前と俺が関係を持ったんだ？！」
「しらばっくれるのか？あんなに優しくしてくれたのに・・・」
「なんで頬を染めるーっ！！身に覚えの無いことを言うなっ！！」
何やら昼メロのような（昼メロでも無いよこんな事）修羅場を催し始めた二人
の間に一人の少女の声がかかる。
「松下先輩最低・・・」
ピシッ！
聞き覚えのある、隆臣にとっては聞き間違える筈の無い愛しい少女の＿＿＿
柳瀬夢実の声を聞き動きが止まる。
「や、柳瀬？」
こちらを責めるように睨みつける夢実の視線が痛いのは気のせいでは無い。
「責任も取らずに逃げるなんて、松下先輩最低です！」
「な、何を言って・・・」
「そうですよ！！」

彼女だけでなく、どうやら騒ぎに気づいた部活の面々が外に出てきたようで他
の女子生徒の責める声も混じり始める。
「ちょ、落ち着け！こいつは男だろう！」
それにうろたえつつも隆臣は最も根本的な事を言ったはずなのだが返ってき
た答えは、
「何てこと言うんですか松下先輩！ミコお姉ちゃんは背は凄く高いけど、歴とし
た女の子ですよ！！それを男だなんて！」
「いいのよ、ユメちゃん。女らしくない私がいけないんだし。」
何故そこでイキナリ女らしい言葉使いになる。ってか何でそんなにしおらしい
んだ命人・・・と結構冷静に心の中で突っ込みを入れる隆臣だった。でも突っ
込み所は何時女になったんだ命人だと思います。
「よくないよ、だって・・・そのミコお姉ちゃんは松下先輩と・・・・」
「私が馬鹿だったのよ、甘い言葉に浮かれて・・・ぅぅ」
「泣かないで、松下先輩には責任をしっかり取って貰おう」
「もういいのよ、彼には将来もあるんだし・・・私一人で何とかするわ」
「そんな、だってミコお姉ちゃんにも・・・」
「隆臣に迷惑をかけたくないの」
命人はすっかり別人になって行き、話は隆臣を置いてどんどん進んでいく。
それと同時に隆臣に向けられる視線がだんだん氷点下にまで落ちていくのが
解る。
・・・・・・・・・・一体自分が何をしたのか。
百歩譲って（譲りたくないが）命人が女だとしても自分には他に心に思う少女
がいるのだし、大体男だと思っていた相手に手を出した覚えなんて無い。まし
てや手を出すなんて寒いことは考えたくも無い。
なのに目の前で繰り広げられているこれは何なんだろうか。
もしかしてこれはドッキリかと期待してもその様子は微塵も無い。
残る望みとしては・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・