STORY
物語を作るのが好きな、文芸部に所属している一人の少女、篭谷真奈。
ある日、真奈は、装丁の立派な一冊のノートを見付ける。
「このノートに相応しい物語を書きたい」
ノートに導かれるように、真奈が書いたのは
獣人達の世界ラミーナの物語。
獣人達の中にも、種の存続を保てないほど
衰退する一族がいる。
ラミーナの政府は、それを阻止するために、
絶滅の危機にある一族をこの保護区へと収容し、
種を絶やさぬよう守っていた。
絶滅の心配のないこの保護区で、獣人達は、
まるで母体に包まれたかのごとく、
夢見るようにまどろむように、
安心して暮らしていけるのだ…。
真奈が目覚めた時、その世界は現実となって真奈の前に広がっていた。
だが、予想に反してその世界は、真奈の思い描いていた平和な世界ではなかった。
助けて…！ 誰か、助けて、お願い…！！
ここから出して…！！
「人魚姫や、お前に人間の足をやろう。
その代わり、お前の美しい声をもらうよ」
昔読んだ物語のワンフレーズが脳裏をよぎる。
魔法使いのお婆さん、
もしも本当にこの世にいるのなら、
壁を引き裂く鋭い爪をください。
空を飛んで逃げる、強靭な翼をください。
声なんていりません。
だって、私の声なんてただの音で
誰も言葉を聞いてくれないのだから…。